EnterPrise/エンタープライズ/2151~2161
初代『スタートレック』から半世紀を経て、時は2001年を迎えた。時代の移行に合わせ新たなる描写を試みようという意図の元、『エンタープライズ(以下、ENT)』の航海が幕を開けた。技術、倫理共に人類が未熟であった22世紀が舞台となり、タイトルから『スタートレック』の文字を抜いた。こうして新たなる時代のファンを獲得しようと画策した製作陣であったが、彼らは見誤った。全体として見事な出来栄えのSF作品に違いはないが、物語には核となるべきものが無かった。視聴率低迷により、航海は予定よりも早めの4シーズンにて終幕を迎えてしまう。
2151年から人類初の宇宙航海に乗り出した『ENT』では、舞台となる時代が刷新された事もあり、前シリーズから引き続いてレギュラー出演する人物は存在せず、新たなるメンバーとして7名の人物を挙げる事が出来る。尚、階級等は物語と共に変動するが、ここでは登場時におけるそれを記す。
ジョナサン・アーチャー。船長(大佐)。演ずるはスコット・バクラ。1954年、アメリカのミズーリ生まれ。父は企業弁護士である。高校時代はサッカー、テニスといったスポーツに打ち込む一方、演劇にも興味を示す。1976年、22歳、カンザス大学卒業後、ニューヨークへ移住。これより本格的に俳優業を目指し、ブロードウェイの舞台、テレビドラマ、『アメリカン・ビューティー』などの映画出演にてキャリアを重ね、その後『ENT』に抜擢。シリーズ終了後はテレビドラマを中心に活躍している。1981年、27歳にてクリスタと結婚し2人の子どもをもうけるも、14年後の1995年、41歳にて破局。翌1996年、42歳にて女優チェルシーと結婚、こちらも2人の子どもをもうけている。ちなみに、妻チェルシーは『スタートレック;ボイジャー』の艦長役、キャスリン・ジェインウェイ役のオーディションを受けた事がある。もしここで合格していれば、スタートレック・キャプテンの夫婦という豪華な関係が成立していたのや知れぬ。
トゥポル。副司令官。異星人のバルカン人である。演ずるはジョリーン・ブレイロック。1975年、アメリカのカリフォルニア生まれ。少女時代はサーフィンに打ち込むと共に、演劇にも興味を示す。1992年、17歳、高校卒業後にファッションモデルとして活動を始め、しばらくの後、ヨーロッパ、アジアで活躍する著名なモデルへの成長を遂げる。1998年、23歳にて女優活動を開始。テレビドラマに出演し経験を積んだ後、『ENT』に抜擢。シリーズ終了後は映画、ドラマへの出演にて活躍を続けている。2003年、30歳にて音楽プロデューサーのマイケルと結婚。原点である『スタートレック』の熱烈なファンであり、好きなキャラクターはミスター・スポック。2匹の犬、1匹の猫を飼っている。ちなみに、『ENT』第28話において、トゥポル副司令官の祖父母たちが1957年の地球に不時着したというエピソードが語られるが、ここでさり気なく「マジックテープ」がバルカンの技術であった事が判明する。マジックテープはNASAが手広く採用している固定技術であり、宇宙船、無人機の各所にマジックテープが使用されている。
チャールズ・タッカー三世。機関主任(少佐)。演ずるはコナー・トリニアー。1969年、アメリカのワシントン生まれ。1987年、18歳、ラスラン大学に進学、フットボールに打ち込むが、しばらくして演劇の魅力に取りつかれる。ミズーリ大学に移行し本格的に演劇の勉学を重ねる。1991年、22歳にて卒業後、テレビドラマ、舞台にて活動し、その後『ENT』の抜擢。シリーズ終了後はテレビドラマを中心に活躍している。2004年、35歳にてアリアナと結婚、1人の子どもがいる。ちなみに、彼は『スタートレック』史上唯一となる、男性の妊娠者である。これは異星人、ジリリアン人と会話を交わす中で、全く予期せず性交渉を行ってしまった結果である。この相手役のジリリアン人、アーレンの日本語吹き替えは、傑作SFアニメ『攻殻機動隊』の草薙素子役として有名な田中敦子が担当している。尚、タッカー三世機関主任の愛称は「トリップ」であるが、これは彼の名が三代《Tripple》続けて同じである事に由来する。
マルコム・リード。保安主任、及び兵器士官(大尉)。演ずるはドミニク・キーティング。1962年、イギリスのレスター生まれ。祖父が大英帝国勲章を受けたイギリス陸軍の准将である。小学校の劇に出演し、演劇への興味を抱く。1984年、、22歳、ユニバーサル・シティカレッジ・ロンドンを最優秀生徒《First Class Hornor》として卒業した後、テレビドラマ、舞台にて活動し経験を積む。その後、『ENT』に抜擢。シリーズ終了後は引き続きドラマ、映画への出演、また声優として活躍をしている。ゴルフ、水泳、音楽、ボディーボード、テニス、読書、旅行といった多彩な趣味を持つ。ちなみに、マルコム大尉はエンタープライズ号に乗船する10年前、水とリンゴジュースだけで1週間を生き延びるという過酷なサバイバル訓練を受けているが、現実にはそれどころではなく、インドのプラハッド・ジャニ《Prahlad Jani》という老人が飲まず食わずの状態で70年間生き延びているという話が存在する。老人の生体については現在研究中との事であるが、この話が本当であるのなら人間は革新的な進化を遂げるのやしれぬ?
トラヴィス・メイウェザー。パイロット担当(少尉)。演ずるはアンソニー・モンゴメリー。1971年、アメリカのインディアナ生まれ。祖父に伝説的なジャズ・ギタリスト、ウェズ・モンゴメリーがいる。1993年、22歳、カリフォルニア大学卒業後、スタンダップ・コメディ、舞台、テレビドラマなどの活動を経て、『ENT』に抜擢。シリーズ終了後はテレビドラマを中心に活躍中。アドリエンヌと結婚している。ちなみに、『ENT』第4話にてトラヴィス少尉が宇宙船員らしい怪談話をした事がある。内容は「63年間漂っていた脱出ポッドから生体反応と救援信号が発せられていたが、中を開けると空。ポッドを開けた人物はその後、異星人の言語を話し始めるなど錯乱し始めた。亜空間ノイズが低い時は今でも謎の救援信号が聞こえる」といったもの。尚、正確さと論理性を追求するバルカン人のトゥポルから即座に「今調べましたが、そんな記録はありません。」と言われ、肩をすくめている。
ホシ・サトウ。通信士(少尉)。演ずるはリンダ・パーク。1978年、大韓民国生まれ。両親は韓国系アメリカ人。彼女の生後、すぐにカリフォルニアへ移住している。高校、大学生時代を通じて劇団に所属し、演技の才能を磨く。2000年、22歳にてイギリスへ渡り、ロンドンの名門学校へ通い始める。並行して舞台、テレビドラマなどで活動し、翌2001年、23歳にて『ENT』への出演を始める。シリーズ終了後はテレビドラマ、映画への出演にて活躍中。英語、韓国語、スペイン語、フランス語を話せる。ちなみに、ホシ通信士は日本人という設定で、出身地は京都。祖母直伝の「おでん」を振舞う場面があるが、秘伝のレシピ表の日本語は実に胡散臭い。その他、『スタートレック』シリーズには時折、日本に関係がありそうな場面や人物が登場するが、その中でも特に異彩を放っているのが『新スタートレック』に登場した暗棒術《Anbo-jitsu》である。これは目隠しをし、専用の棒を使用して相手と対峙するという、24世紀においては最も危険とされる格闘技。ヘルメットなどの装具品やステージ上に「空、星、地、水、火」といった漢字、そして「ユリ、アタル、ラム、うるせいやつら」といった平仮名、片仮名が垣間見られる。製作陣の詳細なる意図は不明であるが、高橋留美子の名作コメディ漫画『うる星やつら』を目にした事のある脚本家の誰かが、作中に登場する日本語をそのまま引用したのであろう。
フロックス。医療主任。異星人のデュノピラ人である。演ずるはジョン・ビリングズリー。1960年、アメリカのペンシルバニア生まれ。高校時代から俳優に興味を抱き、ベニントン大学にて演劇科を学ぶ。1990年、30歳の頃からテレビドラマ、映画などへ端役として出演し経験を重ねた後、『X-ファイル』、『ザ・ホワイトハウス』などの大きなドラマへの出演を経て、『ENT』に抜擢。シリーズ終了後は映画、テレビドラマへの出演にて活躍を続けている。ボニータと結婚しており、2匹の猫を飼っている。ちなみに、ジョン演ずるデュノピラ人という種族は家族というコミュニティ概念を持たず、多夫多妻制の価値観を持ち合わせている。フロックス医療主任には3人の妻がいるが、その妻たちもそれぞれ2人ずつ夫を持っている。現実に2010年現在、道徳的な倫理として人類が持ち合わせている価値観は一夫一妻制であるが、イスラム、アフリカでは一夫多妻制を基調としており、アメリカのモルモン教信者もかつては同制度を道徳の一部とみなしていた。日本でも邪馬台国の時代から江戸時代まで、遡ってみればはるばる15世紀もの間、一夫一妻制と一夫多妻制の混在した倫理観を持ち得た生活を送っている。人間にとって適した性に対する価値観とは何であろう?まだまだ、人類は航海の途中である。
さて、筆者はこう考察する。『ENT』には核となる思想、倫理、哲学が存在しなかった、と。端的に言うなれば、この作品には従来のシリーズが持つロマンと希望を表現し得なかった。初の宇宙航海に浮き足立つ未熟な船員たちを描く事をコンセプトとしていた本シリーズであるが、未熟なのは技術体系なのであって、人間は24世紀前も24世紀後も変わらず、未熟な人間もいれば立派な人間もいる。『ENT』に乗船している船員たちは確かに魅力的な人びとではあるものの、自分勝手で気ままな面が多々見られる、ごくごく現代的、日常的、一般的なキャラクターに留まっていた。23世紀、24世紀へ向けて、彼らこそが人類を導くべく、克己心を厚くしようと努めるべきであったのだ。例えエピソードの内容が以前に描いたものの類似物になったとしても、こうした確固たる、毅然としたキャラクターを描く事こそが、新時代の若者たちを魅了させる原動力になった筈である――……が、兎にも角にも改めて言うが、同作品はSF作品として素晴らしい出来に仕上がっている。
……――という訳で、本日8月19日は、『スタートレック』の生みの親、ジーン・ロッテンベリーの誕生日。人類に素晴らしい物語を遺してくれて、本当にありがとう。
ムービーデータベース(IMDb、英語)<a href=" http://en.wikipedia.org/wiki/Star_trek" target="_blank">Star Trek (Wikipedia、英語)</a>
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